上がってけ

5月
毎度毎度なぜか幹事を任される おそば君ことタマキンヒロシは、すでに5月のシナリオを考えていた。



『 5月のシナリオ 〜眠った横顔 震えるその胸 チキンハート〜 』


まず、5月の開催日を平日にし、タァさんとMP3プレイヤー先輩のスパカジ四次元殺法コンビの動きを軽く封じる。


前回と同じ究極の戦術である「連絡しないの計」でライバルである日産を封じる。


ノーパソの愛ちゃん壁紙について適当にふれてあげて、団長の動きを完全に封じる。


そして、開催日を鹿児島へと旅立っている日にうまく設定し、最も危険な発言をしていた旦那を封じる。


以上の様々な戦略を駆使し、自分の手飼いである、木場くんのみの呼び出しに成功する。



―――当日。


タマキンと木場くんとK子は、広尾の洒落た料理屋みたいなところでデキャンタ赤ワインを飲み交わし、饒舌になっていた。


「あ、俺仕事先から電話入っちゃった、ちょっと行ってくる」とあらかじめ打ち合わせをしていた木場くんが予定通り席を外す。


ここでタマキンの作戦はすべて終了、あとはチキンハートであるオイラが勇気を出して、今日こそは…
と意を決し「スウッ」と思い切り息を吸いこんだところで、ふと外を見ると
そこには、誰に借りたか分からない (もしかして…… あわわ…) SMファッションに身を包んだ、特命係長"レーザーラモン"只野仁の姿が、


「しまった、この人を放置したままだった」タマキンは吸いこんだ息を全部飲みこんでしまった。
さらに視線を横にずらすと「ア・チ・チ ア・チ」とゴールドフィンガーリズムにのせ、さんまるで踊り狂う旦那がいた。


「アンタ、鹿児島に行ったんじゃなかったのか!?」
「俺、早産まれだから、早産まれだから、早産まれだから」


自分の浅はかさを恨むタマキン、今夜も作戦失敗、明日は仕事だ。



―――その頃。


四次元催眠術をマスターしていたタァさんは、旦那が広尾でうかうかしている間に
実家に乗りこみ、嫁に催眠術をかけることに成功、そのまま連れ出し、鹿児島へと愛の逃避行をしていた。




……おっと、途中から自分が考えているシナリオが混ざってしまったようだ。